株式会社小草建築設計事務所

Story 04

水を身近に感じられる空間デザイン

[Café CONNECT.(カフェコネクト)]

Scroll

Outline

 「Café CONNECT.(カフェコネクト)」は、宍道湖を一望する結婚式場「Queen’sMarry(クイーンズマリー)」に増設されたカフェです(2022年6月竣工)。宍道湖に面した広い庭園部分を増築箇所とし、その増築部分を含めた庭及び外構全体の改修もおこないました。

時代が求める
ウエディングの舞台として

 広々としたバンケットルームに定評のある式場でしたが、昨今はウエディングに対する価値観の変化もあってか、控室として使われていた小スペースでのパーティー利用も増えたため、そういったコンパクトな披露宴をさらに充実させるためのカフェスペースを増築したいというオーダーでした。

 中心となるカフェのテーマは、“水を身近に感じられる空間”。 宍道湖畔という絶好のロケーションと立地を活かすため、建築物を水際まで張り出すような形状のプランに決定。また、カフェと庭の全体を通して、インスタグラム等のSNSでの“映え(ばえ)”を意識したキャッチーな仕上がりを期待されていたため、撮影ポイントになるような外構上の仕掛けが点在するようなデザインを計画しました。

Photo: 1.フォトジェニックな庭園 2.宍道湖を一望するカフェ

ロケーションを活かすための
キャンチレバー構造

 カフェを水際まで張り出させる工法として、RC(鉄筋コンクリート)造でのキャンチレバーを採用しました。これは片持ち式構造や片持ち梁とも呼ばれ、片側には柱を設けず、梁やスラブだけで張り出した構造形式のことです。本件では、陸側のみの構造で支え、そのまま中空状態で水際までスラブが伸びる形状になっています。

 こうした構造も、RC造なら経済的、また効率的に計画できること。また、あくまでも景色が主役なので、コンクリートの無機質な質感が周りの景色を阻害しないこと。さらに汽水湖である宍道湖の塩害を考慮する等、総合的に判断した結果でした。

Photo: 1.水際に張り出す全体像 2.対岸からの外観 3,4.SNS映えする見晴台

 増築建物を設計する上での課題としては、カフェの上部にあたるチャペルからの眺めを邪魔しないため、全高を抑えた平屋造りにすることでしたが、屋上のパラペット(立上り部分)をカットしてしまうといった今までにない試みで極力高さをおさえる工夫ができました。

 主役である宍道湖を身近に感じてもらうため、湖側をすべてガラス張りに。外側にある手すりもガラス製にするなど、景観重視デザインを徹底しました。ホール部分も庭園と同じく南国風のデザインにすることで、屋外と屋内がグラデーションのように繋がるように仕上げました。

Photo: 1.南欧風内装のカフェ 2.テラス 3.ガラス製の手すり

無造作なスペースを
意味ある空間に

 一方、苦労したのが増設エリアへ通じるアプローチのデザインでした。元々、専用のエントランスを設けて、そこから増設エリアに繋げたいというオーダーがあったのですが、庭園に直接通じる本館の両サイドは隣家が迫っている上、その狭いスペースには室外機があったり、雑草が生い茂っていたりと、およそ“インスタ映え”とは正反対の状態で、これを庭園エリアと繋げるための工夫を凝らす必要がありました。結果的にはテーマカラーでもあった“ブルー”のスクエアアーチを連ねるデザインで、狭く無造作だったスペースをコンセプチュアルにまとめることができました。

Photo: 1.アプローチ全体像 2.インスタ映えするアーチ構造

フィジカルに訴えかける設計&デザイン

 完成後、来館者からは宍道湖が今まで以上にきれいに見えると好評とのこと。また水郷祭の花火もかなり美しく映えるようで、また違った施設の楽しみ方が提案できるようになったと喜ばれました。Queen’sMarry自体、ロケーションは素晴らしくても主要道路から外れた分かりづらい立地だったため、今回のカフェ増設がSNSを通じて認識も高まり、かなりのPR効果を生んでいるようです。

 今回は宍道湖という絶好のロケーションを活かすため、さまざまに思いを巡らせましたが、現地に何度も足を運んで検証をおこなったことで、頭で考えるのではなく、肌で感じる設計およびデザインになったんだなと、好評の声を聞いて実感しているところです。

Photo: 1.非日常へ誘うエントランス 2.フォトジェニックな仕掛けにあふれる庭園 3.ディテールへのこだわり 4.リゾート感あるバーカウンター 5.外構と内観が一体となり南欧感を演出 6.水面とガラスの対比が美しいテラス 7.コンセプチュアルなアプローチ 8.プランニングの醍醐味が詰まった1枚

Other Stories