
Story 06
景観に溶け込み、環境を明るく照らす立体駐車場
[島根電工 社員専用立体駐車場]
Outline
立体駐車場に見えない
“立体駐車場”を
本来なら立体駐車場のような特殊な建造物には専用のメーカーがあるので、そこにすべてを依頼することもできたのですが、この立体駐車場を表側の通りから見たとき、本社前面に位置するため、社屋を完全に隠す状態になってしまう。つまり、本社の顔ともいうべき位置に立体駐車場が来ることになる。島根電工の顔となり得るような場所に、ありふれた立体駐車場があったのでは、世間的なイメージとしても思わしくないのでは?と思ったんですね。
建築物にとって周囲の景観は大事であり、建築物自体も景観を損なってはいけないものだと考えます。駐車場とは不思議なもので、建築物なのに人の気配が感じられない。しかも大きくて無機質な存在です。あれが町にひとつあることで、町の雰囲気がまったく変わってしまいます。街の景観を保ちながら、なおかつ駐車場として利用できるようにするには、いかに立体駐車場に見えないようにデザインするか、というのが今回のテーマでした。


Photo: 1.本社が奥に見える駐車場前景 2.俯瞰
限られた選択肢のなかで
遊びをプラスする
当初は緑化を考えましたが、メンテナンスが大変になることや、駐車場を覆う外装材を不燃材料にしなくてはならないという法上の規制があり、例えば格子壁のような木製のルーバーも使用が制限されます。結局は金属製に落ち着きましたが、少しでも風通し良く、また建物内が明るくなるように、スチール製パンチングパネルを採用しました。
パンチングパネルとは穴の開いた金属板のことですが、これも消火活動の妨げにならないよう、外周全面を覆うことができないことや、穴の有孔面積についてもパネル全体に対しての一定の開口率が確保されていないと認可されません。そんな消防法上のルールもあり、デザインの制限がかなりありましたが、現在完成したものは、パネルの開口率を計算した上でデザインしたもので、さらにそのデザインも自由にできることから、所々に島根電工のロゴマークを忍ばせてみたりと、ルールを飛び越えない程度に遊び心もプラスしてあります。




Photo: 1.感想や評判などを社員の方に伺う 2,3.様々なデザインのパンチング
夜にはフレーム内側に設置したLED間接照明で、駐車場全体が浮かび上がるよう設計してありますが、社員専用駐車場ということもあり、場内の車がはっきり見えないような造りにもなっています。夜に照らされた駐車場は、オフィスのような雰囲気もあって、無人なのに人の気配が感じられるような温かみが出せたのではと思います。


Photo: 1.明かりが灯る夜の景観
周辺地域を明るく演出する“新しい顔”







Photo: 1.スタイリッシュな外観 2.ロゴマークのパンチング 3.フォントにもこだわった入り口部分 4.圧迫感など感じさせない壁面 5.内側からの見た目も美しいライティング 6.夜間の通行に安心感を提供 7.町を明るく照らす外観